錦繍

錦繍(きんしゅう) (新潮文庫)

錦繍(きんしゅう) (新潮文庫)

うちの本社の前社長が、すごくお気に入りで、毎年一度は読み返すって言うのを聞いて興味が出て読んでみました。

ってのも、その社長、V字回復を成し遂げたって功績はあるものの、見た目もしゃべり方も、冷徹そのもの。
たまにマスコミに登場していた時だって、「もう少し感情込められへんのかなあ?」と思ってたくらいなんです。

その社長が、しっとり情緒の世界を書く宮本輝

対極だな、と思ったので。



内容は、昔夫婦だった男女が偶然にも再会し、手紙のやりとりにより、離婚の時に通じ合えなかった気持ちと、自分達のその後を紐解いていくって話です。

やはりしっとり、大人の男女の世界です。

ところどころに、題名の錦繍を連想させる鮮やかなが、背景に出てきます。

キーになるのが、モーツアルト

モーツアルトを聞いて感じた主人公の「生と死」についての言葉が、周りの人々を動かしていく・・・。

と、久々に読むこんな小説もいいもんです。

私としては、続編を作って欲しい!と思いました。
ただ、やはり興味深かったのは、あのロボットみたいなしゃべり方をする前社長が何を思いながら、毎年この本を読み返すのか・・・。


謎は解けないまま。いつか、また50代に読んでみたい作品です。