真鶴
- 作者: 川上弘美
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/10/30
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 25回
- この商品を含むブログ (171件) を見る
母より、少し上の年代の女性が主人公。
高校に入ったばかりの娘がいる。
夫は12年前に失踪、それから間もなくしてから付き合い始めた恋人がいて・・・。
と、長くなったし、ややネタバレなので、続きは興味のある方のみで。
という設定の中で、主人公が現実と幻覚の中を交錯する様子が描かれています。
女である自分、娘である自分、母である自分。
娘の思春期、恋人とのすれ違いので感じる孤立感が、幻覚の中の’女’を呼ぶ・・・。
という内容。
その中でも、母は、やはり’母’としての主人公と娘のかかわり合いに興味を持ちました。
異物が身体に宿った時の感じ、自分のお腹の中で育っていく時の一体感、そして徐々に言葉を覚えていき’人間’となっていく様子は、自分がまさに体験したところだけに、こういう表現があるんだ、そうだった、そうだったと頷く場面が多い。
女親だからこそ、味わった感覚を思いだします.
だからこそ、玄武や花梨が思春期になって離れていく時、かつて自分の一部だったものがどこか遠くにいってしまうような、こんな複雑な感情や想いを持つのかもしれない・・・。
と、母は、一種の’子離れ記’として、興味深さを感じました。
まっどっちかいったら、昔の日本映画的な、少し暗さの漂う情緒を味わう感じの本です。